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夢から覚めたはずなのに
定時より、一時間遅れての退勤。
残業なんてほぼ当たり前の世の中だとは言え、出来るだけ早く切り上げるように努力はしている。
とある目的のため。
いや、ある意味、生きる原動力だった。
しかし。
「あ~あ。ねぇ、どうする?」
「聞かないでよぉ~。返事は分かってるくせにぃ」
ミカとカオリはお互いに顔を見合わせて唇を尖らせた。
「ふぅ~……」
二つの大きなため息が、空中へ吸い込まれて消えた。
本来ならば、仕事が終わればようやく訪れた開放感たっぷりの時間だということ以外にもう一つ。
好きな彼に会えるというウキウキのハッピータイムが待っていたはずだった。
週に数回、自分へのご褒美と称していた時間が、今となっては雲がかかったようにどんよりする時間になってしまっていた。
お気に入りのバーへ二人で通う。
それがミカとカオリにとっての至福のひとときだったのだ。
「今日も、やめとく?」
「……どうしよっか」
ミカの大きな胸も、最近はぼよんと下向き加減である。
再び、大きなため息が空へと向かっていく。
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