夢から覚めたはずなのに

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「雨……。ねぇ、私たちが樹くんのお店に初めて行ったときのこと、覚えてる?」 「もちろんよ!あの日は飲み会の帰りだったのよねぇ」 「あの日も、こんなふうに雨が降ってたわね」 数年前、二人は有志で開催された飲み会という名の社内の合コンに参加した者同士だった。 同じ会社の隣の部署に勤めていたが、あまり共通の話題もなくほとんど話もしなかった。 それが、合コンで同じ相手に一目惚れして密かにライバル意識を抱いたものの、二人とも見事に玉砕したのだ。 不本意ではあるが一緒に飲み直そうかということになり、こうなったら雰囲気の良い店で心ゆくまで浸りたいよねというミカの提案だった。 そのとき目の前に現れたのが、星の輝く看板が印象的な店。 樹の勤めるバーだった。 妙に輝いて見えたその看板に惹かれ、重厚な扉を思い切って開けた。
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