夢から覚めたはずなのに

7/17
前へ
/17ページ
次へ
『お客様、落ち着いて。バーではゆったりとカクテルをお楽しみくださいね』 『はぁ~い!』 ところで、と樹は続けた。 『お二人はお友達同士なんですか?』 急に尋ねられ、ミカとカオリはきょとんとした表情になった。 友達ではない。同じ会社で働く者同士ではあるが普段ほとんど話したことがなく、合コンであえなく振られてしまい、それがもとで意気投合したなんて言えないではないか。 『……同僚よ』 『そう、そうよ』 お互いの連絡先も知らないのに、友達とは言いがたい。 目と目を合わせて苦笑いをしていたミカとカオリ。 『バーはよく利用されるんですか?』 樹の質問に、ミカとカオリはあたふたと慌て始めた。 『えっ!?う~ん、そうねぇ……実は初めてです』 『……わ、私も、実は』 イケメンな樹の前では余裕のある大人の女性を演じたかったが、プロに嘘をついてもきっと見破られるだろう。 それなら早めに白状しておく方が賢いのだ。 『そうなんですね。それではうちの店が記念すべきデビューということですか。大変光栄です』 にっこり笑う樹の顔にこれ以上ないほど胸をきゅんきゅんさせ、ミカとカオリは悶えるしかなかった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加