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『お客様、落ち着いて。バーではゆったりとカクテルをお楽しみくださいね』
『はぁ~い!』
ところで、と樹は続けた。
『お二人はお友達同士なんですか?』
急に尋ねられ、ミカとカオリはきょとんとした表情になった。
友達ではない。同じ会社で働く者同士ではあるが普段ほとんど話したことがなく、合コンであえなく振られてしまい、それがもとで意気投合したなんて言えないではないか。
『……同僚よ』
『そう、そうよ』
お互いの連絡先も知らないのに、友達とは言いがたい。
目と目を合わせて苦笑いをしていたミカとカオリ。
『バーはよく利用されるんですか?』
樹の質問に、ミカとカオリはあたふたと慌て始めた。
『えっ!?う~ん、そうねぇ……実は初めてです』
『……わ、私も、実は』
イケメンな樹の前では余裕のある大人の女性を演じたかったが、プロに嘘をついてもきっと見破られるだろう。
それなら早めに白状しておく方が賢いのだ。
『そうなんですね。それではうちの店が記念すべきデビューということですか。大変光栄です』
にっこり笑う樹の顔にこれ以上ないほど胸をきゅんきゅんさせ、ミカとカオリは悶えるしかなかった。
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