理想の家庭、買いませんか?

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理想の家庭、買いませんか?

 アユムとの『お泊まりデート』は連夜のこととなり、いつしかスミレはさまざまなオプション機能を試すようになった。  そのたびにクルマダは律儀にスミレの家を訪ね、オプション内容を丁寧に説明した。  “朝食オプション”、“ドライブオプション”、“温泉旅行オプション”、”同棲オプション”。  そのどれもに、スミレは大満足だった。  やがてごく自然な流れでアユムとの結婚を考え出したスミレがそのことをクルマダに相談すると、  「であれば、井上様に理想の家庭生活を送っていただくためのオプションがすべてセットになった“プレミアムファミリープラン”へ移行していただくのが最もお得かと」  と言うので、スミレは即座に契約した。  この頃になると、もうスミレは『V-utopia』内で自らの理想を叶えることに躊躇しなくなっていた。  毎回のサービスに満足していたのもあるが、なによりもクルマダというセールスマンを信頼するようになっていたからだ。  ——この男は、わたしの理想をなんでも叶えてくれる。  こうしてスミレの『V-utopia』体験はどんどん進んでいった。  “プロポーズオプション”、”ウェディングオプション”、“妊娠オプション”、“出産オプション”、“マイホームオプション”、“公園デビューオプション”、 “ママ友オプション”、 “七五三オプション”……  スミレは『V-utopia』内で小さな頃から夢見ていた理想を次々に叶えていった。  かわいい花嫁さんになることも、素敵な旦那さんと暮らすことも、幸せな家庭を持つことも。  そうして月日は流れ——
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