run

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「いや、別に、うん。なんかすごくない? 空知くんといると、虹が発生するっていう」 「たまたまじゃん」 「うん……でも。あ、あのさ。空知くん、あのね」 「え?」 「もし桐院高校行けたらさ、一緒にクラブ入らない? 私も、青春っぽいことしてみようかな、高校入ったら」 「え……」 「まあ空知くんさえよかったらだけどね! 行けたらだけど! 帰ろう、もう帰らなきゃ」  校門をくぐっても、まだ虹はかかっていた。空知くんの家の上に見えるけれど、家までたどり着くとまた虹は遠ざかった。  一生手の届かないもの。目に見えるけど、形のないもの。  夢を何かに例えるとしたら、虹だ。いつまでも追い続けるもの。そしてその前にはいつも、大粒の雨が立ちはだかるということ。  夕立は、前に進んでいるというしるしだ。  ずぶ濡れで、進んでいくのだ。 「よし、空知くん走ろう!」  私は急に走り出した。虹に向かって、走り出した。 「ええっ? 小日向さんっ?」  帰宅部だけど、なんか走りたかった。ぴちゃっ、ぴちゃんと、水たまりが踊る。  あっという間に空知くんは追いついた。 「小日向さんっ、何っ?」 「あの虹まで、走れっ!」
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