16人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「いや、別に、うん。なんかすごくない? 空知くんといると、虹が発生するっていう」
「たまたまじゃん」
「うん……でも。あ、あのさ。空知くん、あのね」
「え?」
「もし桐院高校行けたらさ、一緒にクラブ入らない? 私も、青春っぽいことしてみようかな、高校入ったら」
「え……」
「まあ空知くんさえよかったらだけどね! 行けたらだけど! 帰ろう、もう帰らなきゃ」
校門をくぐっても、まだ虹はかかっていた。空知くんの家の上に見えるけれど、家までたどり着くとまた虹は遠ざかった。
一生手の届かないもの。目に見えるけど、形のないもの。
夢を何かに例えるとしたら、虹だ。いつまでも追い続けるもの。そしてその前にはいつも、大粒の雨が立ちはだかるということ。
夕立は、前に進んでいるというしるしだ。
ずぶ濡れで、進んでいくのだ。
「よし、空知くん走ろう!」
私は急に走り出した。虹に向かって、走り出した。
「ええっ? 小日向さんっ?」
帰宅部だけど、なんか走りたかった。ぴちゃっ、ぴちゃんと、水たまりが踊る。
あっという間に空知くんは追いついた。
「小日向さんっ、何っ?」
「あの虹まで、走れっ!」
最初のコメントを投稿しよう!