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どんな時も、走る空知くんは美しい。私は教室の窓から身を乗り出して、空知くんを目で追いかける。走り抜けた後、空知くんは大きく息を吐いて、すっきりした顔で空を仰ぐ。きっとそんな時の空はいつも晴れ渡り、色は透き通った水色だ。空知くんの走りには、青空がよく似合う。
だけど、どうしても人生には雨が降る。空知くんにも、誰の上にも。
出し忘れた提出物を作成している間に、とうとう雨が降り出した。空知くんの言う通り。
雨は乱暴でしつこかった。ぐずぐずとくすぶり続ける悲しみのように、雷は遠ざかりながらも鳴り続けた。雨も、町を叩き壊さんばかりに強く長く降った。
「あーあー、もう」
空知くんは誰に言うでもなくそう言った。
「止むかな」
私がつぶやくと、空知くんは初めて気づいたみたいな顔で私を見た。
「傘、持ってきた?」
「えっ? うん」
「入れてくれない?」
「えっ? ああ、いいけど……家、どっちなの?」
「あっ。すぐそこだから」
本当に、すぐそこだった。相合傘の時間もすぐに終わった。
「ありがとう、雨やばかったから助かった。……えーと」
「小日向」
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