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私は空知くんの進路を盗み見ようとした。「院」だけが、見える。
「……なに、小日向さん」
「はっ」
気がつけばガン見していた。空知くんはいぶかしげに私を見ている。
「桐院高校……?」
勇気を出して聞いてみた。
「……うん」
空知くんは軽く不機嫌そうだった。さすがにこれは個人情報だ、気分を害してしまうのも無理はない。
「行きたかった高校だから」
「……そっか」
桐院高校は、偏差値も高いがスポーツの強豪校でもある。陸上も、例外ではない。
ケガをする前の空知くんなら、走っているだけで受かる高校だった、はずだ。
「……実は、私もそこ行こうと思っていたの」
「え、まじ?」
まじではない。うそをついた。
「でも難しいよね。行けるかなあ」
「……分かんないけど。でも、今から頑張ったらワンチャンあるかも。がんばろうよ」
「……行けるかな」一緒に。
「うん、行けるよきっと。がんばろうよ一緒に」
「あっ」
「なに?」
「……ううん」
「一緒に」がんばる。「一緒に」行く。「一緒に」トゥギャザー、あとウィズミー。「一緒に」って最高だ。空知くんの「一緒に」が、頭の中でリピート再生されて、踊り出したくなった。
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