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空知くんは、窓の外を見ている。外では、部活真っ最中である。きっと陸上部も、いる。
気にならないはずが、ないのだった。
お昼を回ると、少しずつ皆帰っていき、教室は徐々に寒々しくなっていった。部活だったり、塾だったり、皆忙しい。
空知くんの方を見ると、気がつけば男子は空知くんただ一人になっていた。もう窓の外は見ていない。一心にノートに何か書きつけている。
三時が過ぎて、私たちも帰ることにした。私は六時から夏期講習に行かなくてはならない。
「空知くん。まだいるの」
声をかけてみた。
「雨が降る」
空知くんは空も見ずに、つぶやいた。
すると、さああ、と、背後から忍び寄るように、本当に大粒の雨が降ってきた。
「うわっ」
「雨だ」
「やばーい、どうしよ」
たちまち視界が雨の灰色一色になった。グラウンドにいた生徒たちも、なにか叫びながら校舎に吸い込まれていく。
「わぁ〜、すごいね……」
教室の皆は、ただただ勢いよく降る雨を、つっ立って見ているしかなかった。荒ぶる自然に、人はいつも無力である。空知くんもノートから顔を上げて、窓の外を見ていた。真っ暗になった窓に、空知くんの顔が映る。
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