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「火を使ってもいいんですか?」
「まあ、駄目なんだけどね、でもこんな雨だからばれないだろ」
「そう、でしょうか」
「そうそう。それでお兄さん、仕事はわりとうまくいってるだろ?」
「ええ、まあ」
仕事……。
仕事運を頼んだけれど、特に何か気になることがあるわけでもなかった。うまくいっているような気はする。少なくとも大きな失敗はない。比較的順調に生きてきて、このままうまくいけばそれなりには……。
ぼんやりと将来のことを考えている間にも占い師は俺の手首やら指を順番に揉みほぐしていく。慣れないぬるぬるした気持ち悪さと、マッサージの気持ちよさ。でもこの香りで少しだけリラックスしたような心持ち。
将来か。
「お兄さん、占い興味ないだろ」
「はい、あっ」
「くふふ、いいさいいさ。まあここに来たのも何かの運命の気まぐれだろ」
「はぁ」
「そうだなぁ。お兄さんはこのままだとそれなりに出世して、それなりに幸せに結婚して、それなりに幸せな老後を過ごすだろうさ」
「やけにざっくりですね」
少し呆れた気分になる。占いというのはこんなにざっくりしたものだろうか。誰にでもいえるような、そして誰にでも当てはまるような。でも前に占ってもらった占いも確かにもっともらしく言い繕ってはいたけれど、それっぽいことを言うだけだった気がする。
なんとなく特別な気分だったのがなにか少しバカバカしくなった。
そんな空気を読んだのか占い師は続ける。
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