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確かにこのロボットが先に趣味の合う相手を見つけてくれたら、学校生活がずっと楽になるだろう。
ロボットに合わせて小さな声で口ずさんでいた山岸さんが突然、「このロボットの名前、『キャラボット』っていうの、どうですか?」と言った。
「頭が四角くてキャラメルみたいだし、体もキャラメルの箱みたいだし。私の『キャラ』をロボットが相手に伝えてくれるんですよね」
キャラボット。今まで心の中で「ロボット」と呼んでいたが、名前がついたらより愛らしさが増したように感じる。
「私もこのロボット、キャラメルみたいだなって思ってました」
私が言うと、山岸さんが笑った。今までよりもぐっと距離の近づいた、親しみを込めた笑顔だった。
「須原さんも、作るときにキャラメルを意識したんですか?」
「そうですね。なるべくおもちゃっぽくしたくて四角いロボットを作っていたらキャラメルっぽくなったので、色も手触りも統一しました」
「じゃあ、このロボットを商品化するときは『キャラボット』にしましょうよ! かわいい名前のほうが絶対みんなに覚えてもらえるし!」
山岸さんは明るく言ったが、その瞬間須原さんの無表情に暗い影がよぎったのを私は見逃さなかった。
須原さんは自分の技術を世に出したくないと言っていた。それなら、須原さんのロボットが商品化される日は来ないのだろう。
でも、須原さんが作っているロボットは人が使って初めて価値が出るのではないか。無重力空間での歩行のように、誰にも使われないロボットは何の反応も得られない。
須原さんの暗い影は一瞬で消えてしまったが、私はいつまでも影の意味を考えていた。
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