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「私がこうやって地面に足を委ねると、地面からの抗力を受けます。硬い地面を歩くのと、柔らかい絨毯の上を歩くのでは歩き方も変わるでしょう。そもそも無重力状態では歩行できません。相手がいて初めて成立する。それがコミュニケーションです」
二足歩行ロボットでコミュニケーションそのものを学ぶと言った須原さんの言葉がようやく理解できた気がした。
「ちなみに、お二人に渡しているロボットもノンバーバルコミュニケーションの練習なんです」
須原さんに言われてはっと気づいた。家にいる小さなロボットを見ながら、私がまさに考えたことだった。
「あのロボットもしゃべりませんし、表情も変わりません。首をわずかに動かしたり目の光を変えたりするだけです。でも、何だかロボットが嬉しそうだとか悲しそうだとか思いませんでしたか?」
「思いました」
私が答えるよりも先に山岸さんが即答した。あのロボットから感情を読み取っていたのは私だけではなかった。
「でも、ロボットには感情がありません。ロボットの首の動きや目の明滅を見て、人間が『ロボットはこう思っているのではないか』と考えるんです。人間関係でもありますよね。相手は何も言っていないのに、表情で『この人怒っているんじゃないか』って思いませんか?」
須原さんの問いかけに思わず頷く。営業時代にはいつもお客さんの顔色をうかがって、「嫌がっているんじゃないか。早く帰れと思っているんじゃないか」と想像してはびくびくしていた。
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