第5章 ロボットからコミュニケーションを学ぶ

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 ロボットを受け取ったときに一緒に渡されたクッションケースにロボットを収める。細長いケースをリュックのサイドポケットに入れてみたが、暑い中自転車で走っていくのにここに入れていては熱くなってしまうだろうか。  考えた末、ケースをフェイスタオルでくるんでリュックの底に入れた。ロボットを受け取ったときには他の荷物と一緒に入れて持ち帰ってきたのに、「連れていく」と考えると邪険には扱えなかった。  昨日須原さんからもらったキーのボタンを押すと、倉庫の内側で鍵がガチャリと開く音が聞こえた。シャッターを半分開けてくぐり抜け、シャッターを下ろすと内側にキーと同じ楕円形の機械が取り付けられているのに気づいた。この機械が鍵を開閉してくれるのだろう。  倉庫のシャッターが開くのと同時に部屋のドアの鍵も開くと言っていたが、私は念のためドアをノックした。「はい」という須原さんの声が聞こえてノブに手をかけると、確かに鍵は開いていた。  今までは毎朝ここまで佐野さんに連れてきてもらっていたのが、なんだかこの部屋のメンバーとして認められたようで嬉しかった。 「おはようございます」  声をかけると須原さんはいつものようにパソコンの前にいた。私はリュックを開き、フェイスタオルの包みからケースを出してロボットを取り出していると、山岸さんもやってきた。  テーブルの上に山岸さんのロボットと並べて座らせる。まったく同じロボットのはずなのに、自分のロボットがどちらなのかわかる。何もしていなくてもわずかに左に首を傾げているのが私のロボットだ。
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