第5章 ロボットからコミュニケーションを学ぶ

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「二人のロボットが揃いましたね。それでは始めます」  須原さんがテーブルの上でノートパソコンを広げると、何やらキーボードを操作した。すると、並んで座っているロボットたちがゆっくりと立ち上がった。ロボットはいつも置物のように座っていたので、自分で立ちあがるのを初めて見た私と山岸さんは息を呑んだ。  ロボットたちはゆっくりと体の向きを変え、互いに向き合った。二体のロボットの腕が同時に上がり、握手をした。その様子がかわいらしくて思わず口元がほころんでしまった。  ロボットの目はどちらも白い光が点灯している。ロボットたちはしばらく握手をしていると思ったら、突然目の色が二体同時に水色に変わった。  その瞬間、合成された電子音がロボットから流れ出した。二体のロボットからは同じメロディが流れている。キャラメル箱のようなロボットたちから流れているのは、私にはなじみのある音楽だった。 「織方美琴(おがたみこと)?」  私が思わず言うと、山岸さんが私の顔を見た。 「藤沢さん、織方美琴好きなんですか?」  私たちは顔を見合わせた。ロボットたちが歌っているのはシンガーソングライターの織方美琴の曲だ。まだメジャーデビュー前のアーティストで、動画投稿サイトで曲を公開している。チャンネル登録者数も再生回数もそれほどではないマイナーなアーティストなので、今まで織方美琴を知っている人に出会ったことはなかった。  このロボットを渡されたとき、須原さんは「持ち主の好みを学習する」と言っていた。それなら山岸さんも織方美琴が好きなのだろう。
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