第5章 ロボットからコミュニケーションを学ぶ

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「このロボットたちは握手をするだけで、お互いの共通点を見つけられるんです」  驚いている私たちの前で、須原さんが言った。 「一週間ほどの間で、ロボットたちは持ち主の趣味嗜好を学習しました。握手をしてお互いの情報を参照し、共通点を見つけ出すんです。人間では一目合っただけではどんな共通点があるかわかりませんが、ロボットたちは握手するだけでわかるんです。羨ましいでしょう?」  須原さんが得意気な声で言った。ロボットたちは握手をしたまま歌を歌い続けている。アコースティックギターで歌われる織方美琴の歌をロボットたちの電子音が奏でているのは不思議な感覚だったが、何だか二体のロボットは楽しそうに見えた。 「共通点がなくても友達にはなれますが、共通点があったほうがコミュニケーションのハードルは下がります。話すきっかけもできますし」  確かに、年が大きく離れている山岸さんとは今まで大した会話はしてこなかった。それが、自分と同じようにマイナーなアーティストを好んでいると知っただけで心理的な距離が縮まっている。 「これ、学校で使えそうですね」  そう言った山岸さんの目が輝いていた。 「たとえば学校に入学する前とかクラス替えの前にこのロボットに自分の好きなものを学習させておけば、ロボットたちが勝手に友達を見つけてくれるんですよね」 「そうなります」 「いいなあ、これ。これがあったら自分に合う友達を探すためにあっちのグループに入ったりこっちのグループに入ったりする必要がなくて楽だなあ」
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