第6章 夏が終わる焦り

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 求人を探すなら勤務地と職種を絞り込まなければならない。勤務地はつくばで、職種はいろいろ考えた結果事務系にしてみた。とにかく営業だけはやりたくない。接客も無理だ。なるべく人と接するのが少ない仕事を選びたい。  絞り込んで表示された事務系の求人を一つ一つ見ていく。「電話応対」の文言に胃のあたりが締めつけられる。前に勤めていた会社でも、事務職の人はいつも電話応対に追われていた。電話は苦手だ。でも営業よりはましかもしれない。  「パソコンスキルのある方」という文言にもひるむ。パソコンはネットで検索したり大学のレポートを書いたりするのに使う程度で、「パソコンスキルがある」と言い切る自信はない。  さらに追い打ちをかけるのが「事務経験のある方」だ。入社三か月で会社を辞めたような人間には何の経験もない。  会社を三か月で辞めた過去は変わらない。パソコンは今からでもどうにかして覚えよう。電話応対は苦手なので、受付やコールセンターのようなところはやめておこう。  そんなことを考えているうちに応募できる会社はどんどん絞られていく。  条件に合う求人の残り件数が少なくなって焦る中、「経験者歓迎。未経験でもOKです」と書かれている求人を見つけた。ソフトウェア開発会社の事務らしい。求人サイトの応募フォームで受付をした後に履歴書を郵送、面接はお盆明けと書かれている。  ダメもとでいい。とりあえずやってみよう。そう思いながらもしばらく悩んでから応募ボタンをクリックした。あとはコンビニに行って履歴書を買ってこよう。  母の電話から求人を見つけて応募するまで約二時間。それだけでも一日分のエネルギーを使い果たしたくらい疲れていた。
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