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夜
誰もが寝静まった音もない町で、彼は月を見ていた。
おもむろに指を振ると、パッと光の粉が舞い、小さな人が現れる。
琥珀色の髪に、薄紅の瞳。
くすんだ色のワイシャツのような服に、瞳と同じ薄紅のベスト。膝丈ほどの茶色いズボンをはいた少年のコビトは無垢な光を宿したその瞳に彼をとらえている。
肩に乗ったコビトはその腕に抱えた灰色の石を差し出した。
「お、ありがとう持って帰ってきてくれたんだね」
ポケットに石を入れ、指先で優しくなでれば嬉しそうに笑顔を綻ばせるコビトに彼も思わず笑みを浮かべた。
「…ありがとうね、オルガ」
オルガと呼ばれたコビトはもっと撫でて!と頭を指にぐりぐりと押し付けて催促している。
待ちきれずに名前を呼ぶオルガの催促に答えて再び頭をなで始める。
”ゆ う と”
「はいはい」
おやすみ、いい夢を
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