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あのハゲに感謝なんぞしなけりゃよかった。ぜったに呪ってやる。残り少ない毛根死滅させてやるからな。
さっきまでの言葉を真逆にして呪いの言葉を頭の中で延々と回す。
なぜだか今日は不運が続いた。
落としたハンカチ拾えば相手は怯え、
雑務を手伝えば相手は怯え、
教室に入れば周りが怯える。
不運の中で機嫌が悪くなっていったから、最後のはしょうがないとも言える。
かといって今現在進行形で根も葉もないうわさ話からの陰口を言われているわけだが。
声と嗤いが耳の中でよく響く。
ああ、やめてくれよ。今日は三割り増しくらいでネガティブなんだ。
いつもより言葉が深く刺さる。
ズキズキと深く差し込まれた心臓から言葉が流れる。
いつも仏頂面の完全不愛想だからって傷つかないわけないだろ。
こっちだって痛いんだよ。
ああ、痛い。痛いなぁ。
後ろ向きな思いが頭を満たしていく。
まずいな、オーバーキルだ。死体撃ちはやめてくれ。勢いで手が出そうになる。
早く、早く終われ。授業でも始まってしまえ。なんでこういうときに限って昼休みなんだ。やっぱり今日の俺は運が悪い。
両手で耳をふさぎじっと耐える。意味はないが目もつぶった。自分は教室にいないとでも言うように。
ざわざわとふさぐ両手をすり抜けて、声が耳をかすめていく。
もうやめてくれ、と一段と力を込めて耳と目をふさいだ。
その直後、自分の机がドンッ!!と大きく音を立てた。
いきなりの衝撃にビクッと体を震わせる。閉じた目を恐る恐る開いてみれば、目の前には優斗が自分の机に手をついて立っていた。
こいつが机をたたいたのか、と頭の隅で思う。
シン、と静まった教室で、優斗一人だけが動き出し、こちらを向いた。
「旭、今日はもう帰れ」
にっこりと笑う優斗見て、俺はハイ、としか言えなかった。
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