0人が本棚に入れています
本棚に追加
担任に病気だからと嘘をついて帰ったその日の夜。
夕食中も昼休みの時の言葉が頭の中を巡って上の空だったためか家族に心配された。ごめんと内心つぶやきながら今回のはだいぶ長引きそうだな、と思いベッド自室に向かう。
「…そういえば」
ふと思い出してカバンの中をあさる。帰る前に優斗が渡してきたものがあった。
”あ、そうだ。…はいこれ”
”…なんだそれ?”
”ふっふっふ…月の石”
”は?”
”これ持って寝るとよく眠れるんだってさ”
”いらねえ”
”悪夢も見ないんだってよ”
”俺は悪夢見ねえって言っただろ”
”ん?”
”いやだから”
”ん??”
”……分かった”
なんてやり取りをして半ば強引にもらったものだ。
カバンをひっくり返してようやく出てきた月の石。手に取った灰色の小さな石は表面がすべすべとしていること以外、普通の石と変わらないように見える。
「まさかあいつパチモン持たされたんじゃ…」
少し不安に思うが、まあ、あいつの好意を無駄にするのもどうかと思うし、使わないと後々面倒くさい気もするから使ってやるか。
寝ている間にどっかにやる気もしなくもないがとりあえず手にもって眠る。ベッドに潜った瞬間、散々眠れなかった昨日とは違って導かれるようにすぅっと瞼が落ちていった。
最初のコメントを投稿しよう!