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パッと目を開けた先にあったのは暗闇だけだった。
自分の下には地面がないはずなのにまるで宙に浮いているように落ちることなくそこにとどまっている。キョロキョロとあたりを見回してみてもどこまでも闇が続いている空間に少し寒気がした。
諦めて前を見ると、ずっと先にうすぼんやりと白色が見える気がする。目を凝らしてじっと見つめていると、不意に白色がずうっと近づいてきた。たまらず閉じた目を開くと、先ほどまでの景色が激変していた。
「こ、こは…」
目を開けたその先は、教室だった。
「ねぇ、汐見くんってなんか怖くない?」
「分かるー!なんか不良っぽいよね」
「不良っぽいじゃなくてホントに不良らしいよ」
「えー!まじ!?」
「まじまじ。なんか隣の高校の不良全部ぶっ倒したって聞いたよ」
「そういやこの前校舎裏にいたけどもしかして喧嘩してたのかな」
「絶対そうだよ!うっわ怖w」
「目見ただけで半殺しにされるとかホント?」
「先輩の友達が肩ぶつかっただけでタコ殴りにされたんだって」
「怖すぎて先生も手におえないらしいよ」
「汐見がヤクやったってマジ!?ww」
「中学生で犯罪ってヤッバww」
「うっわ犯罪者と同じ学校かよ」
「いいじゃんか俺なんて同クラだぜ!?いつ殴られるかなんて気が気じゃねえよ」
「よく先生の手伝いしてるの見てるけどあれって内心上げかな」
「親が賄賂渡してんだときっと。気づかせないためのカモフラージュだろ」
ザクザクと、ナイフが刺さっていく。体中から血が流れているみたいだ。
クッソ優斗のやつ。やっぱパチモンじゃねえか。あいつが悪夢のこと言ったから見たのかもしれないが。とにかくあんなの信じるんじゃなかった。
あんなのに縋って絶望している自分がいることに気づいて自嘲が漏れる。
全く、夢なら早く覚めてくれよ。ああ、でもこれ明晰夢か。明晰夢って目覚めた後も頭の中に記憶残るのか?どっちにしろ今最悪な気分なのは変わらないか。もし覚えてたら優斗を一番に殴ろうか。渾身の一撃をお見舞いしてやる。
だから、だから。
早く、覚めてくれ
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