指切り

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 俺は内心げんなりしていた。  充也はこの歳になっても、俺の傍をくっついて離れようとしない。小さい頃だったら子分のように従順な充也が、嫌いじゃなかったし可愛いとも思っていた。でも今は大人に近づいた高校生の男子で、状況は変わっている。  僅かに頬を緩め視線を本に向けている充也は、いつまで子供気分なのだろうか。俺は一歳しか変わらない従兄弟に呆れ返っていた。 「何?」  僕の視線に気づいたのか充也が、顔を上げて俺を見た。  くっきりとした二重に、スッと通った鼻筋。優しげな緩いカーブの掛かった口元。普通にイケメンの部類に入るのに、女子と遊ばずに大人しく読書に励むのは理解できない。 「彼女とかいないのか?」 「いないよ。どうして?」  どうしてと聞かれても、何気なしに聞いた質問に理由を求められるとは考えもしなかった。 「いや……イケメンだから、いてもおかしくないんじゃないかと思っただ けで」  別に隠す必要もないと、思ったままを口にする。充也は少し驚いた表情で「へぇー。カッコいいって思ってくれてるんだ」と意外な反応を返した。 「まぁ……」  なんだか恥ずかしくなり、尻の座りが悪い。 「嬉しい」  何がだと、首を傾げると、充也が俺に体を寄せてくる。 「僕さ、裕ちゃんに褒められるのが一番嬉しい」  いつもと違うなんだか熱っぽい目に、変に心臓が早まった。
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