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「めっちゃイケメンじゃん彼氏!!初音ちゃんって見かけによらず面食いなのね!?」 「…いや、そういうわけじゃ…」 「しかもバイト先まで迎えに来てくれるとかチョー優男じゃん!」 「……」 “優男”なんて言葉、あの男には一番似合わないと思う。 現にこの間 迎えに来ていたのだって、自分のマンションの鍵を紛失させてしまったからであって、決して私の身を案じての行動じゃない。 そう思ったけれど、それを口にする事はやめた。なるべくあの男の話しはしたくないから。 そんな私の心境なんて知る由もないミクさんは「うらやまし~」と、本当に心底羨んでいるような声を出して、矢継ぎ早に口を開いた。 「ね、付き合おうと思った決め手ってなんだったの!?」 ズイ、と顔を近づけて、食い気味にそう問われた。 「決め手…」 「うんそう、決め手!」 お盆の淵に黒く煤けた汚れが付いているのが目に入って、いっそう力を籠めて布巾を往復させればキュ、キュ、と耳障りのいい音が微かに響いた。 その音を耳に受け止めながら、 「…信用、してなかったからです」 ちいさくそう零せば、ミクさんは「え?」と目を丸くした。
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