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一般的に大人は朝起きて出勤して仕事をはじめるらしいけど、僕の仕事は朝、家だけで完結する。目覚まし時計が鳴る朝7時。ここからの10分間が僕の唯一の仕事の時間だ。
リナは目覚まし時計を暴力的に叩いて、すぐに黙らせてしまう。そして頬を枕に擦り寄せ、また小さないびきをかき始める。
先に起きていた僕はベッドに再度あがって、リナの顔をしげしげと眺める。これだけ気持ちよく寝ているのだから、起こすのも忍びなく思うのだが、寝坊するとリナは僕になぜ起こさなかったのか逆ギレしてくる。怒られるのは嫌だから仕方がない、それからリナを起こすのは僕の日課になった。
声をかけながら枕と逆側の頬を押すが、うめくばかりでまず起きない。押すごとに発せられるうめき声はおもちゃみたいで面白くて愛おしい。何度かやって起きなければ、次はリナに飛び乗る。今度はうめき声ではなくて、「ぐえっ」と胃から何か飛び出たような音を出す。これでだいたい起きるが、それでも起きなければ次は耳元で叫びまくる。
「んん……レン、重いよぉ、わかったよぉ……」
ここまで起きれば大丈夫。
これが僕のこの家での唯一の仕事で、それ以外はのんきに暮らしている。僕はリナの彼氏で、ヒモである。
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