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 別に僕はヒモになりたくてヒモになっているわけではない。ただ僕とリナのふたりでの生活の形があって、そのとき僕の状態を表す言葉がヒモだっただけだ。お互いが多少の我慢をしつつも、できる範囲のことをして生活しているだけである。  ヒモといっても、僕はお金をリナにせびることはないし、ギャンブルをしたりゲームの課金をしまくったりはしない。ただ家賃や食費、その他生活にかかる細々とした費用をリナが支払っている。  驚くかもしれないが、そもそもリナは僕が外に出ることを望んでいない。リナは朝見送ってもらって、帰ってきたら家にいてくれればいいのだという。それ以上は僕に望んでいないのだ。  玄関の外から、リナの足音が聞こえる。いつもよりテンポが一定ではないから、きっと疲れているのだろう。この頃帰りが遅い日が多かった。こういうときはゆったりと出迎える。足音でリナの元気さや疲労を見抜くことができるのは僕が身につけた能力だ。飛び起き玄関に向かい、リナを出迎えるスタンバイをする。 「ただいまぁ、レン、疲れたよぉ」  リナはそう言って僕に抱きつき頬を寄せる。ヒゲが当たるし、僕は頬を寄せ合うのは好きではないのだが、僕らの生活はリナが頑張ることで成り立っているのだ。緊張してたリナの身体が緩んでくるのがわかる。じっと我慢する。 「あたしの彼氏、レン。大好きだよぉ」  そういって今度は僕の顔を自分に向け、無理やりに目を合わせてくる。気まぐれな僕も、リナからの一途な愛はこそばゆい。 「よし、それじゃあ晩御飯にしようか」  それに僕は家事もやらないから、リナがご飯を作るのをずっと待っている。
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