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 そのまま日が沈む頃になって、インターホンの鳴る音と共にドアが借金の取り立てかのように叩かれた。急な音に身体が驚き、遅れてリナがびくついたのにまた驚いた。  リナは四つん這いになり顔を上げた。不安の混ざる顔は、「リナ、いるの!?」とドアの外から声を出す声に気づき小さく息を吐いて緊張を解いた。やってきたのはリナのお母さんだ。  鳴り止まないドアを叩く音に、ふらつきながらリナは玄関に向かった。チェーンと鍵を外すと、リナが開けるより先にドアが開く。真っ青になったお母さんの顔に、不謹慎だが青鬼が来たと思った。 「リナ! どうしたの! 会社の人から電話があったのよ!」  肩で呼吸しながらお母さんは言った。リナは口を一文字にして足元を見ていた。 「病気ではないのね? ひとまず何かあったんじゃなくてよかったわ……家、入るわよ」  靴を脱ごうとするお母さんを見て、リナは重たげな足を引きずりながら部屋に戻った。  コーヒーの少し残ったマグカップ、ベッドの上に丸まった布団、締め切ったカーテン、カゴに半分ほど溜まった洗濯物、お母さんはそれらに目を止めながら何周か部屋を見渡した。リナはソファを背もたれに座ってパジャマのフードを深くかぶっていた。ラグにそのまま座ったお母さんの顔はもう鬼の形相ではなく、悲しみと優しさが入り混じっていた。
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