第一章 一、社会へ進出

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第一章 一、社会へ進出

「ねえ、そこの。」 この言葉は、わたしが社会人1年目、看護師1年目の初日に先輩からかけられた言葉だ。 わたしは強い希望があって看護師になった訳ではない。幼稚園の頃は「医者になりたい。」と言っていた。それは親が喜ぶから。しかし、学力が足りず医者にはなれなかった。小学校、中学校とその年らしい夢はあった。アイドルだったり、ネイリストだったり。ただ、その夢を言うと両親は冗談だと思い笑って流された。わたしは真剣だった。そのため、私は自分の夢を持つことなく、親の希望はなんなんだろうと考えるようになった。そして、看護師なら親は満足するんじゃないか。と考えるようになった。そして、看護学校に行き看護師になった。看護師の就職先も親に気を遣い、大学病院にした。  そして、わたしの看護師・社会人1年目がこの大学病院で始まったのだ。  入職し、すぐにオリエンテーション。その後に配属発表。18階から発表がはじまる。下の階に行くにつれて、患者さん重症度が高い病棟になる。4階から下はICUや手術室など特殊な部署になる。ちなみにわたしの第一希望は一般病棟。一般病棟なら、どこでもいいと思っていた。ただ、第五希望まで強制的に書かなくてはいけないという決まりがあり、第二希望以下は適当に実習先の病棟を書いた。この第五希望まで書くということが、わたしの運命を左右するとは知らず。上の階から呼ばれ始め、なかなか呼ばれない。4階まできた。呼ばれない。ウソだ。わたしは一般病棟を希望した。なんで、呼ばれない。最後、1階。わたしは絶望した。そこにはERと高度救命救急センター。高度救命救急センターなんて救命病棟24時とかのイメージしかない。呼び忘れだと信じた。しかし、わたしは高度救命救急センターで名前が呼ばれた。わたしの同僚曰く、呼ばれた時のわたしは死んだ魚の目をしていたらしい。わたしは、なんでわたしが、と繰り返し心の中で唱えていた。そのまま師長と共に配属部署へ移動した。  配属部署にて師長からのオリエンテーションのみで、その日は終わった。同期は8人。そのうち1人は同じ学校の同級生で安心した。次の日、救命センターの入り口で待ち合わせをし一緒に出勤した。休憩室に恐る恐る入り、荷物を置く場所が分からないため、先輩が来るのを待って荷物を置いた。
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