3人が本棚に入れています
本棚に追加
「言ったでしょ。松本明穂には妄想癖があるって。社長様に限って、ありえないって。」
未来も青島のことを疑っているわけではないし、明穂の勘違いだと思うが、不安は拭えない。
「これって宏さんに話すべきだよね。」
未来の言葉に、綾香は頷く。
「その方がいいよ。うちで問題を起こした時も、相手は彼女がいるのに思わせぶりな態度で、二股しようとしたって騒いだらしいの。でも相手の男の子や周りの証言で、挨拶程度に言葉を交わしただけだったんだって。一応、社長様も気を付けた方がいい。あしらい上手な気もするけどね。」
未来は綾香から、明穂のブログのアドレスを聞くと、ため息をついた。
「今日から、宏さん出張なの。」
そう言ってから、肝心なことを綾香に報告していないことに、気が付いた。
「仕事にも関わることだから、ここだけの話にしといて欲しいんだけど…、宮下君に会った。」
綾香は首を傾げてから、次の瞬間、大きな声を出した。
「宮下って、あの宮下?キャプテン宮下?」
綾香のネーミングセンスは、昔から変わっていたと未来は思い出し、声を出して笑う。
「そう、あなたと噂になったいう宮下君。私、知らなかった。そんなことになっていたなんて。」
おかしそうに話す未来を、綾香はぶすっとした表情で睨んだ。
そんな綾香に、宮下と再会した経緯を話して聞かせた。
「それで?今日は、社長様がキャプテン宮下と会ってるの?」
「会っているって言っても、仕事だよ。」
ふーん、と綾香は意味ありげな表情で、未来を見ている。
「懐かしいな。あの頃、未来とあいつが仲良くしてるのが嫌で嫌で。きっと社長様も、気に食わないはずだよ。あんな爽やかな好青年。」
「好青年って。同い年でしょ。」
笑顔になった未来に安心した綾香は、清瀬の待つ部屋へと帰って行った。
ひとりになった未来は、青島に電話をしてみようかと思ったが、やめておいた。
うまく電話で話せる自信がなかった。
だいたい仕事で行っているのだし、恐らく夜も接待を受けているのだろう。
それでも宿泊まで世話になるのは気が引けると、泊まるのは駅近くのビジネスホテルだと言っていた。
とにかく明日だ、と未来は気を取り直し、夕食の準備を始めた。
最初のコメントを投稿しよう!