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「何?これ。」
しらける未来に、綾香は当然と言った様子で、説明を始めた。
「どうでもいい内容でしょ。でもこのブログの主が松本明穂って聞いたらどう?」
綾香の口から意外な名前が出てきて、未来は驚いた。
「松本さん?どうして綾香が松本さんのこと知ってるの?」
「彼女、派遣でしょ。うちのビルの事務所でも仕事していたことがあるの。事務所だからテナントで働く従業員とは接点ないんだけど、私が仲良くしているお店の子が、たまたま親しくなって、今でもたまに、メッセージのやり取りするみたいなんだけど。」
世の中狭いな、と未来は思いながら綾香の話を聞いていた。
「その子と今日、お昼が一緒になってね。少し困った様子で、このブログ見せてくれたの。私は知らなかったんだけど、松本明穂には妄想癖があって、テナントで働く、イケメンの店員と一騒動あったみたいなのよね。」
未来は呆気に取られたが、明穂に感じた違和感と、青島を見つめていた表情を思い出していた。
「未来、もしかして何かあった?」
その質問には答えずに、それより先に言葉が出てしまっていた。
「このブログの相手って、もしかして…。」
綾香は、ため息をついて頷いた。
「たぶん、社長様のこと。松本明穂が広告会社で働くことになって、今度こそ運命の人だってメッセージが来たんだけど、って相談されたの。ほっといたらって聞き流していたんだけど、気になって会社名を聞いてもらったら、『フォアフロント企画』だって返信がきて、もうびっくり。」
綾香の話に、心が重くなるのを感じながらも、未来はブログの続きを読み始めた。
『いつもより早く出勤してしまった。
たまたま彼も早い出社だったみたいで
タイミングが良かったと嬉しそうだった。』
『いつもお昼ご飯を食べない彼を、思い切って
ランチに誘ったら嬉しそうにしていた。
ご馳走してくれましたぁ。』
『立場を気にして、一歩を踏み出せないみたい。
そんな彼の笑顔が見たくて、コーヒータイムの
僅かな時間を大切にしている。』
『女性から来てくれたら、願ったり叶ったりだと
言った彼のために、勇気を出そうと思う。』
ブログの日付が、昨日で最後になっているの確認して、未来は綾香に携帯を返した。
「最近、仕事で頻繁に会社に行っていたし、ブログに書かれていた内容も見たり聞いたりして、知ってるいることもあるんだけど…。」
「そうなんだ。」
綾香は、そう聞いて安心したようだった。
「松本さんが、宏さんを見ているのは、気付いたんだけど、この書き方って、まるで宏さんにも気があるような内容だよね。」
不安そうに話す未来に、綾香は慌てて否定する。
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