八月十五日

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八月十五日

朝から座敷に呼ばれて 家族揃ってラジオに拝礼、 大人の誰ともなしに 「やっとかぁ…やっと終わった」 呟きがもれました。 私達子供は、示し合わせたように 村の小学校の校庭に。 校長先生が校庭の真ん中で 空を仰いでおられました。  「先生、戦争が終わったって   どういうことなん?」 一年生が尋ねると  「…夕立、止んだ…   みたいなもんかなあ…」 校長先生は空を見たまま続けました。  「大風に倒れた者…   雷に打たれた者…   身体も心もなぎ倒された   長い長い…酷い夕立やった」  「これから日本はどうなる    のでしょうか?」 イトコの儀くんの問いに  「晴れたやないか?   とにかく晴れたんや。   まだまだ道は泥濘(ぬかるみ)、   かもしれん…けど、   虹も掛かるやろう。   傘はいらん、いらんのや!   大きく手を振って   皆で歩こうやないか!」 自分を鼓舞する校長先生の声は 私達の心にも晴れ間を下さいました。              つまらぬ徒然書きを   失礼致しました。   孫の日記に、ついあの頃を   あの終戦の夏を   思い出しまして…。   コロナ…奇妙な有事となり…   先生方の御苦労が、   あの当時の先生の、   大人の苦労に重なりました。   まだまだ予断ならぬ情勢、   どうか、身体を厭われて   お仕事に励んで下さい。                 松堂 りん  
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