1.人形と探偵とコスプレイヤー

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(う〜ん……)  真希のバックの中  琥珀は暇を持て余していた (窮屈だし……する事ないな……)  両手でチャックを開け外を覗く (誰もいない……よし!)  そっと鞄の中から抜け出す  机の下に降り立った琥珀は辺りを見渡す (出口は……あっちか……)  障害物を避け出口へと向かう  人なら3秒とかからない距離だが、琥珀には辿り着くまで一苦労だった (ラッキー。扉が開いてる)  隙間から廊下を覗く (授業中だし誰もいないな)  周囲を確認し廊下に出る  2組と3組の間にはトイレがあり1組の先には階段があった  4組の先には視聴覚室がある (彩は1組だって確か真希が言ってたな。しかし広いな……)  彩の教室1組の方を向く (なんか匂うな……)  廊下に出た時から漂っている匂い  反対側4組に近くにつれだんだんと強くなっている気がした  気になった琥珀は4組へと向かう (なんの匂いだ?)  どうやら4組から流れて来ているようだった (扉閉まってて、よく見えねぇな)  キーンコーン…… (やべ、終了チャイムだ)  チャイムと同時に3組へと走る  幸い誰にも見られることは無かった (セーフだったな。早く真希の鞄に戻ろう)  急いで真希の席へと戻ると、よじ登って鞄の中に入る  数分後、男子生徒が戻って来た (危なかったな。バレたら風花と真希がうるさいし)  続々と生徒が戻って来て賑やかになる  しばらくして真希が戻って来た (真希、遅かったな)  そう思っていると、鞄がゆっくりと動く  廊下を歩く足音。階段を上る足音  ようやく着いた先は屋上だった  開いたチャックの隙間から青空が見える 「琥珀、出て来ていいよ」  琥珀が出て来ると、真希は弁当を取り出す  そして黙々と食べ始める 「いつもここで食べてるのか」 「うん。此処だとあまり人が来ないし、1人で気楽に過ごせるから」 「相変わらずだな。あとミートボール好きだね真希」 「うるさい。それより、私がいない間に抜け出してないでしょうね」 「大丈夫。鞄から動いてない」 (本当は抜け出したけどな) 「そう。なら良いけど」 「しかし、本当に誰も来ないな」 「まぁ、学食とか中庭で食べる人が殆んどだし。それに此処は別館の屋上だからね。こんな遠くまで来る人はそう居ないんじゃない」 (静かだし、落ちつく) 「わざわざ此処に来る真希は相変わらずの一匹狼だな」 「確かに1人で気楽に過ごせるけど……理由はそれだけじゃないよ」 「……?」 青空に浮かぶ白い雲を眺めた 「此処から見る景色が好きだから」
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