1.人形と探偵とコスプレイヤー

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「お待たせ、琥珀」  鞄の中の琥珀はゆっくりと起き上がる 「相変わらず、じゃんけん弱いな」 (さっきの聞いてたのか) 「なによ。私だって、ちゃんと勝つ時だってあるわよ」 「俺には勝ったことないけどな」 「それは、あんたが強すぎるからでしょ。……それで? 匂いはまだする?」  辺りを見渡す琥珀  そして、ある方向を指差す 「まだ漂ってるな。恐らくあっちからだな」 「あっちって、4組?」 (彩のクラスじゃないんだ。とりあえず向かおう)  教室を出ると4組へと向かう  扉から様子を窺うと、誰もいない事が確認できる (何とも無さそうだけど……) 「入ってみるか?」 「うん」  そっと扉を開け入室する。特に何も起こらない 「何か起こるかも知れないから、1周だけして出るよ」 「わかった」  教室を時計周りに進んでいく  1周したところで、教室を出て隅へと移動する 「どうだった?」 「うーん……、よく分からない。だが、匂うのはこの教室からじゃ無さそうだ」 「えっ?」 「入った時、匂いはそんなに強くなかった。むしろ廊下の方がキツい」 「そうなの?」 (私は、やはり感じないな……) 「特にあそこの階段が匂いが強いな」 「階段?」 (あの奥の階段?)  階段に近寄るも何もない 「どう?」 「蔓延しててよく分からないな」 「取り敢えず、降りて1階から見ていくよ」 「あぁ。頼む」  琥珀を鞄に仕舞い、階段をゆっくり降りていく  1階に降りると手前から図書室、職員室、保健室があり  更に奥には第1体育館がある 「琥珀、どう?」  真希が小声で聞くと、鞄から琥珀がひょっこりと顔を出す 「……匂いはするが。2階より薄い気がする。発生源はここでは無さそうだぞ」 「そう…。じゃあ、次行こうか」 (2階は見たから、次は3階か……)  息を切らしながら、3階へと上って行く 「はぁ……はぁ……」 「本当に、体力ないな」 「うるさい。1階から3階に上るの、文化部にはキツいんだよ」  3階に着いた時には、体力に限界が来ていた 「やっと着いた……」  ゆっくりと息を整える  3階には、各文化部の部室が並んでいる 「……ここは?」  鞄の中から辺りを見渡す琥珀  そして奥を指差す 「さっきよりは匂いがキツくなってるな。恐らく向こうから来てる」 「そうなの……?」 「この階、何かありそうだな」 「い、行ってみるか……」
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