26人が本棚に入れています
本棚に追加
はじまり。
今宵も軒下の赤提灯に火が灯った。
と、言うことはもう少しで大門が開く刻と言うことだ。
大門はこの遊郭唯一の出入り口…。
入るは易いが出るは難しい…。
そんな大門が開けば遊郭の中には色んな者たちが入ってくる。
それは骸に群がるうるさいハエのように…。
またはその骸を食い破り出てきたウジ虫のように…。
ちりりーん……。
薄いガラスの風鈴を湿気を帯びた夏の熱い風が揺らし、涼やかながらもどこか物悲しいその音を奏でた。
「夕立が来る…」
そうぽつりと呟いた男娼は怠惰の溜め息を吐き出し、いつもの席に着いてぼんやりと格子の外の世界を眺めていた。
最初のコメントを投稿しよう!