第5章 五匹目 褄黒白絵 Aパート

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 牡丹は薫の言っていることがあまり理解できなかった。  ここへやってくる前に授業か何かで学んだことなのだろうか。 「つまり月や宇宙へ行くことも戦争なんだってこと?」  牡丹は戦争という言葉にピンと来ない。 「はい。見方の問題と言われればそれまでですが、地球を離れる距離に比例してその技術は高まり、その進歩はあらゆる物を生むんです」 「まぁ、確かに。でもそれで私たちの生活は豊かになる訳でしょ」 「おそらく大半の人の生活はそうなると思います。現に自分がこういう所にいられるのも多かれ少なかれ、その豊かさの中にいるからだと思います。しかし……」 「しかし?」 「見えないモノまで見ようとして、そればかり気にしてると俺みたいになってしまう……かもしれません。だから、ここにいるんだと思います」 「……そうだね」  牡丹は笑顔で頷いた。
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