第5章 五匹目 褄黒白絵 Aパート

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「時間が進めば進むほど、見えるモノは増えていく。遠く離れた星や宇宙。ましてや人の心もです。そこに何があるって言うんでしょうか。希望なんて言葉にすがりたくない。欲望だけで満たされた未来なんて見えない方がいい。でも考えたくもないのに、それを考えてしまうんです。この子たちをどうしたらいいのか。俺はどうしたらいいのだろうか」  薫は手を広げると、蝶の羽を生やした女の子がいた。その子は、幾何学模様の描かれた白いワンピースを着ていた。まるでアイドルのようにも見える。  アゲハチョウと同じ形をした背の羽は、白色。下の左右の羽だけ複雑な模様―木々を下から見上げて葉と葉が重なり合ってはいるが、所々の隙間から空が見える―だった。表側も同じ模様なのだろうかと牡丹は気になったが、女の子は仰向けの状態で羽を広げていたのでわかない。 「この子たちは、心に張られた蜘蛛の巣に捕まってしまった。俺は心に蜘蛛の巣なんて仕掛けたつもりもないのに。断ち切ってあげた方がいいんですかね? そのからまった糸を」 「もし、薫君が彼女たちの状態だったらどう思う?」
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