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 薫は長いフライトを終え、「静かの海」空港の待ち合わせ場所に一人いた。空港は多くの人たちで賑わっている。  初めての月なのか、地球より小さな重力を楽しんで忍者のように飛び跳ねている人もいれば、その重力に違和感を持ち、気分を悪くしている人をたまに見かける。  俺は今回で三度目の月。小学生の時に家族旅行で一度来て、中学の修学旅行で二度目。そして、十七才にして三回目の月旅行。この年で三回は多い方だ、一般的に。しかし、今回の月旅行、いや仕事……よくわからないが、旅費は全て相手持ち。それに報酬金すらついてくる。人助けをして欲しいとのことだ。  ただ詳しい内容は現地で説明すると言われた。あやしいとは思いつつも、社会から信頼ある企業Gaiax(ガイアックス)社からのお願いでもあったから引き受けた。  俺はベンチに座りながら、目の前を浮遊する半透明のホログラムを見ていた。 〈現在、月では『iMagi+CA』は有効圏外のため使用できません。ご不便をおかけしまして申し訳ございません〉  という文字列と、車の標識のように斜線の引かれた『iMagi + CA』のロゴが表示されていた。
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