Bパート 中

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 薫は苦笑し、この月旅行で初めて背中に冷ややかなものを感じた。 「こちらも事は穏便に進めたいので、ご協力お願いしますよ」 「それで俺はユニバース世界でどうやって彼女を救出すればいいんですか?」  薫は元の話へ戻した。 「救出という言葉がわかりずらくてすみません。DDDにいる彼女をボタン一つで元の肉体に戻すことは可能です」 「えっ。何でDDDの中に……」 「それは彼女の思念・思念波が周囲の人間に影響を与えるからです。しかもiマギを介さずに直接」 「どういう意味ですか、それは」  薫は首をかしげた。 「自らiマギとなった、という表現がわかりやすいでしょう。彼女はLCL通信をiマギではなく対ヒトと行うことができるようになってしまったのです」 「でも、LCL通信はATFwで拒絶できるはずではないんですか?」 「我々の開発したiマギではそうです。ATFwは外部からの危険なLCL通信をブロックします。人が元から備えている心の壁。誰にも侵される事のない排他的精神領域。嫌なアクセスを自らの意思で拒否できます」 「なぜ、彼女の場合はそれができないんですか?」
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