Bパート 後

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Bパート 後

 一閃の光が向かい合った壁に反射してランダムな方向へ流れて行く。その光は消えることはない。  薫の目の前に白い羽を生やした女の子がいた。その羽が蜘蛛の巣にからまっている。暗い世界で不気味に光る緑色の鎖は、彼女の体や手足に巻かれていて、彼女は宙で身動きがとれない状態だった。  その鎖はどこから伸びてきているのかわからないくらい遠くへと伸びている。鎖につながれ、黒く長い髪を垂らしたその女の子。  この子がホワイト・カンバス……。  薫を睨みつけるつり上がった目。カプセルの中で眠っていた幼く可愛らしい印象とは違っていた。何もかもをあきらめ、ユニバース世界の主に捕食されるのを待っているかのようだ。 「プライベートオンリーの四人目か。私を説得しようとしても無駄だ。もう結果はわかりきっている」  ホワイト・カンバスの声とは違う。ボーカロイドとして人々を魅了していた大人びた声ではなく、脱力してしゃべるのも面倒なくらいの力のない声。  薫の想像と現実の差が開き過ぎていて、薫の頭では解釈できないほどだ。返答はおろか、声を出すこともできなかった薫。
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