Bパート 後

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 もう私を汚さないで――。  白い蝶の羽を蜘蛛の巣にからませ、体を鎖につながれた白絵の目と口は閉じられ、光は出なくなった。  薫のまぶたは半分閉じ、白絵を見つめていた。白絵の絶零波を受けてもまだ自分がある。でも頭の中は、渦巻く白絵の悲しみと喪失感でいっぱいで、ぐちゃぐちゃしている。 「あなたも私を捕食した一人に過ぎないのよ」  白絵はくたりと肩を落とす。 「ち……ちがう」 「しぶといね。早く逃げたがいいよ。私と二人でいたら、今以上に自分を無くすことになるよ」  白絵は意味深な笑みを浮かべた。  ――私と二人でいたら……。  そうか。今は二人きりなんだ。あの時と状況は一緒だ。あれを……。渦巻く海の中で薫は一つの光を見つけた。 「ホワイト・カンバス一色に染められるのなら、自分がなくなってもかまわない」  薫がそう言うと、白絵は薫を睨みつけ、 「気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い」  気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。白絵の声が空間にこだまする。 「ホワイト・カンバスの本当の姿、白絵さんに会えた記念に『有り無し問答』をしよう。プライベートオンリーでやってたでしょ」
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