Cパート

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 すでに消灯時間は過ぎている。  病室のカーテンはベッドの所だけ開いていて、月灯りが差し込んでいる。降り続いていた雨は昼のうちにやみ、雲は晴れた。  薫と牡丹は晴れた星空に浮かぶ月を眺めていた。その月は、満月を過ぎて欠け始めている。牡丹は昼間の勤務を終え、私服姿であった。 「壮大な話ね」  一度聞いただけでは理解できなかった私は、説明を受けながら薫の話を聞いていた。たびたび壮大だと思っていたが、感想はその一言に尽きた。 「未来は誰にでもあると言います。今という現在もあるのに。自分以外の何かにとらわれながら、皆、明日は満月になろうとしている。もし、満月になったら、円満を保っていられると思ってますよね」 「……」 「満月の未来は欠ける他ないんです。俺という月と同じで。根本的に俺に満月の時はなく、初めから欠けている状態だったのに……。この子たちは俺にとらわれてしまった。どうしようもないのに」  薫は、標本ケースを大事に持っていた。すでに白絵も標本の中に加えられている。
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