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「白絵さんは自分の体に戻れて良かったみたいだし、こうして薫君の手の中におさまった。ということは、白絵さんや他の子たちにとって、どんな状態の薫君であっても薫君が拠り所なんだと思うよ」
「この子たちの拠り所が俺……」
薫は首をかしげて、
「そうなのかな。仮にそうだとして、俺の拠り所はどこにあるんですかね、牡丹さん。ここが拠り所で入院しているのかな。いや、ここはとらわれているって感じだし」
薫は薄暗い室内を見回した。
「ここを薫君の拠り所にしたらダメよ。今はいいけど、まずはお家に帰れるようにしないと」
「そ、そうですね」
薫は手に持った標本ケースに目を落とした。
「さぁ、そろそろ寝ましょう。これ以上は体に障るわ」
薫は標本ケースをベッド脇の台の上に置き、布団の中に入った。
「彼女たちをつかまえて来たのは薫君だし、薫君が彼女たちを求めていたのかもしれないよ」
「そうなのかな。わかりません」
薫は半身布団から出て標本ケースの中にいる子たちを見つめた。
「この子たちと相談してみます。近いうちに」
そう言って薫は布団に入り直した。牡丹は布団をしっかり薫にかけた。
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