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第6章 六匹目 楯葉蒼 Aパート
「おはよう!」
朝、そう言ってスライド式のドアを開けて薫の病室に入って来た牡丹。
薫はベッドの上に立って何やら、はしゃいでいるようだった。幼い子供がまるで飛行機を手にもって飛ばしているように薫は遊んでいた。
「薫君。ご機嫌のようね。朝ごはんだよ」
牡丹が声をかけると、薫はベッドから飛び降りた。室内を走り回る。朝食の乗ったトレーを持った牡丹の周りをぐるぐると回る。
「ちょっと、ぶつかったら危ないでしょ」
牡丹はそう言いつつも、薫が手にして飛ばしている鮮やかな色の羽を見ていた。
四枚の羽の中心は黒く外へ広がるに連れて色が変化している。下の両羽は黒から青へ。そして、縁は白。上の両羽は同じく黒から薄黄色へ。縁は同じく白。縁より内側にオレンジ色の斑点がどの羽にも二つずつあった。
「俺もこうなりたい」
薫は自分で操る蝶の女の子を見ながら言った。声も表情もとても明るい薫。
「薫君も空を飛びたいの?」
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