第6章 六匹目 楯葉蒼 Aパート

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 嬉しそうな薫君を見ていると私も何だか心が楽だわ。でも、このプラスの反動が突然機嫌を損ねてつぶれて欲しくないのが正直なところ。そうなってしまった時の対応が大変なのは目に見えている。 「水を得た魚です」 「どういうこと、薫君」  牡丹は朝食をテーブルに置いた。そして、カーテンを開けると眩しいほどの朝の陽が室内に差し込んでくる。 「そういう場所や環境、人と出会うことが必要ってことです」 「薫君は見つけられたってこと?」 「この子は見つけられたようです。俺は俺でそんな場所を見つけたいんですけど……」  薫はそう言いながら、ベッドに座った。両手で優しく包み込む蝶の羽を生やした女の子を見て、一つため息をするとガクッと肩を下げた。 「好きでやった訳じゃない。偶然、そうなってしまった。今までそうしないように気をつけて来たのに、一度のことで全てがひっくり返ってしまうんです。俺の生きる世界は……。この子もそうなんです」
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