第6章 六匹目 楯葉蒼 Aパート

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 さっきまではしゃいでいた薫ではなくなっていた。牡丹はたんたんと話す薫の手元を見た。鮮やかな羽を生やした幼い女の子は着物を着ていた。羽の鮮やかさとは真逆で色味のない地味な着物だった。 「気にかけて気にかけて細かく対応しているはずなのに、それは望まれず、たった一枚羽をむしり取られてしまうだけで飛べなくなってしまうんです。認めてもらえない。飛べないやつとして。どうしてですか? 何で平等って言葉があるんですかね」  思っていたよりも早く薫君の気持ちは反転してしまったか。もしかして、これが絶零波というやつかと牡丹は昨日薫から聞いた話を思い出した。  白絵さんほど強力なものでないにしろ、薫君がこうなると私の気持ちも少しへこむ。薫君の気持ちをいじってしまったのかと内心焦ってしまう。 「私が言えることは、物事に基準があって、枠組の中で行動を展開しなければならないの。それを守って平等として扱われる」  牡丹は言った――薫君はどうとらえるのか。自分はその基準、枠組からはずれているのかと考えるのだろうか。
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