第6章 六匹目 楯葉蒼 Aパート

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「結局、俺はこの子を箱の中に入れなきゃならない。それしか方法がない。もっと自分に、狂わない強い心があれば、彼女たちを捕らえることもなかった……。生み出さなかった……」  そう聞いて牡丹は少しほっとした。薫が変に思い悩んでしまうかもしれないと思っていた。  ――なんだ。結局、自分のことじゃなく、この子たちのことばかり見ているのね。 「薫君。そんなこと言わないで。この子たちは薫君を求めて来たんだと思う。薫君も望んでいたから、今一緒に薫君の手の中にいるんだよ。世の中の基準や枠がなんなのよ。薫君が自ら作り出した世界、その世界が良くて薫君の所へやって来たのよ、彼女たちは」  ――私じゃない。 「俺が作り出した世界……」 「そう。薫君の世界が必要なのよ。創っていきなさい!」  薫は標本ケースの中に、今日新たに捕らえた子を入れた。ガラス板を元にはめ直すと、薫は一人一人目を合わせ、会話するように頷いていた。 「さぁ、朝ごはんを食べよう。薫君」  そう。私は彼を見守ることしかできないのね。
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