Bパート 前

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 薫より年が十才上のイノガリは、声を荒立てることなく言い終えた。薫は口をすぼめ、何も言わなかった。 「立派になったじゃねぇか、お前も。先代の船に乗っていただけはあるぜ」  紹介屋はあごヒゲを触って笑った。 「もうね、船長と言っても、見習い並みの子供だから」  薫の一つ年上の女空賊ハレミは、母親が自分の子供を謙遜して紹介するように答えた。 「うるせー。で、うちの依頼は?」  薫はふてくされた顔になった。 「おう。それなんだがな。今朝、地上(した)から上がって来たばかりでな。新鮮だぜ」  紹介屋は、カウンターの中から一枚の紙を出して、薫たち三人に見せた。 「魚屋じゃねぇぞ、ここは」  薫が突っ込んだ。 「活きがいいぞ。詳しいことは読んでもらえばわかるが、簡単な話、誰もいない海のど真ん中にとあるモノを捨ててくれってよ」 「とあるモノ?」  薫は依頼書を受け取り、見ることもせずイノガリに渡した。 「あれだよ」
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