Bパート 前

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 紹介屋は、嬉しそうにケースをカウンターの上に置いた。ハレミが目を輝かせながらゆっくりとケースを開けた。びっちりと札束が詰まっている。 「くぉー。はぶりがいいね。あの箱を海に捨てるだけでこんなにもらえるなんてね。おい、船長この依頼、引き受けろ!」  ハレミは今にもよだれをこぼしそうな表情だった。薫はジロッとハレミを睨んだが、すぐに木箱に視線を戻した。そして、両手で箱を持ち上げた。 「少し重いな。二人がかりだな」  よくこんなものを下から雲の上まで運んで来たな。富士越(ふじえつ)の街は、下から富士の山でつながっているとはいえ、なぜここまでわざわざ上げてくる……。船を地上まで呼びつければいいのに。それにあの多額な報酬金……。 「順序が逆だろ。先払いってよ、どうせ危ないものか何かだろうな」  薫はそう言いながら、イノガリの持っていた依頼書に了承サインをした。そして、依頼書を紹介屋に渡す代わりに、報酬金の入ったケースを手にした。  紹介屋は、薫のサインを確認し、 「確かに。この依頼はセリカ・パラノイド空賊団に託したぜ」  と、きざったらしく言った。
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