Bパート 前

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 と、薫が答えると、紹介屋は腹を抱えながら大笑いした。 「何がおかしいんだ? 沈めるぞ」  握りこぶしを見せる薫。 「あぁ、悪い悪い。薫の船だった。気にするな。うー腹いてぇぜ」  紹介屋は笑い続けた。 「船長。そろそろ出向できるよー」  ハレミが甲板から声をかけて来た。薫は手をあげてわかったと合図を送った。 「もうこの金は返さないから。気が向いたらまた寄るわ」  紹介屋に捨て台詞を吐き、甲板に渡された細い橋を薫は渡った。振り返ると紹介屋はこちらに手を振っていた。隣でハレミも手を振っていた。  薫は船の少し高い所へ移動し、出向準備をするクルーを見下げた。 「今日の夜は祭りだ。心して仕事にかかれ!」  船長の張り上げた声に呼応するように、クルーの雄叫びが上がる。 「遠深黒海に向けて、出航!」 「セリカの願い星に届け! キャプテン!」  クルーは声を揃えて言い放った。いつの間にか薫のそばに立っていたイノガリと薫は目を合わせると、イノガリがコクっと頷いた。踵を返して操舵室に向かった。
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