Bパート 中

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 その子は怯えて震えている。田舎染みた着物を着ていて、長い間着古されくたびれた着物だった。そして、女の子の背中側には黒い布がかぶされていて何かが隠してあるようだ。  三人は驚きを隠せず、目を合わせた。 「中身を見るなって、こういうことか……」  薫は腕を組み、けわしい顔をした。 「船長。これは見ない方が良かったですね」 「そうだな……。フタをしろ」  薫の命令にイノガリは困った表情を浮かべた。 「あんたたち、生かしたまま海に捨てる気? まだこんな幼い子供」  ハレミが両腕を伸ばし、フタをさせないよう木箱を覆った。箱の中の子は、ひざに顔をうずめて泣きだした。 「どうして捨てられたのかは知らないが、空賊への依頼に同情などいらない。先の大戦で一つの同情が迷いを生み、この船の船長は死んだ。セリカ・パラノイド空賊団のクルーもな」  薫は強く拳を握りしめていた。 「対象が子供であろうと無駄な同情はするな。これは船長命――」 「まだ引きずってるの、薫ちゃん!」  薫の言葉尻にかぶせてハレミが言った。 「ハレミ。船の上で子供扱いするように呼ぶなって言っただろ」
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