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「もっと大人になろうよ、薫ちゃん」
「十分大人だ。それにこの船の船長だからな」
「違うよ……。薫ちゃんのお父さんだったら見捨てたりしない。もっと器が大きかった。だから、こんなに立派な飛空艇を飛ばして、今よりも多くのクルーに囲まれていた」
ハレミの言葉を聞いて薫はハレミに背を向けた。
「思い出させるな。……わかってるよ」
薫の声は震えていた。
イノガリは一歩離れて二人のやり取りを見ていた。やれやれ、まだまだ子供ですね船長と思っていた。
「どちらが船長なのか私にはわからなくなってきました。で、ハレミはこの子をどうしたいのですか?」
イノガリが聞いた。
「決まってるじゃない。私の妹にするのよ」
大まじめな顔でハレミは言い切った。
「即刻、船を降りろ。その子を連れて。兄弟ごっこは地上でやってろ」
イノガリに何かを言われる前に薫が口早に言って詰め寄った。
「嫌よ。すぐ下は海だし。だいたい報酬金が先払いで手に入ったんだから、この子をどうするも私たちの勝手でしょ」
「うっ。それはそうだが……」
薫は何も言い返せなかった。
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