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「依頼完了の報告も必要ありませんから、事実」
さらにイノガリがハレミの発言に付け加えると、薫はますます何も言えなくなってしまった。
「泣かないで、大丈夫だよ」
と、ハレミは女の子を箱の中から抱き上げ、近くの荷の上に座らせた。背中にかぶされた黒い布は女の子の背丈ほどあった。
薫は、自分の意見を通すことをあきらめ、イスに座り直した。
「名前はなんて言うの? 年はいくつ?」
ハレミは、すすり泣く女の子の膝をやさしくさすりながら聞いた。すぐに答えなかったが、少し待っていると女の子は泣きやみ、うるんだ赤い目でハレミを見つめた。
「あおい。楯葉蒼」
「蒼ちゃんね。年はいくつかな?」
ハレミが再度聞く。
「十才」
すぐに答えは返ってきた
「十才か。狭い箱でよく頑張ったね。背中の黒い布は何かな。見てもいいかな?」
蒼は首を左右に振って、ハレミの服をつかんだ。
「いや。ダメ。あたし呪われてるの。見たらお姉ちゃんも死んじゃう……」
蒼がつかむ手の力がさらに強くなる。
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