Bパート 中

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「羽からこぼれる黄色い粉を吸うと、死んじゃうの」 「おそらく羽についている鱗粉だろう。何らかの作用で鱗粉が毒化してしまったのだろう」  イノガリが言った。 「親に捨てられたのか?」  薫は表情を変えず、まっすぐ蒼を見て聞いた。 「ちょっと薫ちゃん。そういうことはまだ……」 「お母さんはこの粉を吸って死んじゃいました」  蒼の一言で、その場は静まり返った。飛空艇の機関音や風を切る音、風のぶつかる音も聞こえない。 「お父さんは私が生まれて、私に羽があると知っていなくなってしまいました。お母さんがそう言ってました。羽は最初小さくて、私が大きくなるとだんだん大きなくなって隠しきれなくなりました。そして、山奥の村の蔵の中に逃げました。でも村の人たちにだんだん気味悪がれて呪いとか言われて、お母さんはお医者さんを探してくれたりしました。でも何もわかりませんでした。そして、昨日、私は捨てられることになり村の人に蔵から引っぱり出されて、その時お母さんが私を守ろうとして……。私が抵抗したりしたから羽から粉が落ちて、お母さんがそれを吸ってしまった」
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